アクアリウムにおける「立ち上げ」とは、単に水槽に水を入れることではなく、魚の排泄物を分解してくれる「ろ過バクテリア」を繁殖させ、生態系を作るプロセスを指します。
買ってきたばかりの真っさらな水には、有害なアンモニアを分解するバクテリアがほとんどいません。この状態で魚を入れると、自分の排泄物で水が汚れ、数日で死んでしまう「新セット症候群」が起こりやすくなります。魚が健康に暮らせる環境を作るには、このバクテリアを育てる準備期間が不可欠です。
まずは水槽、底砂、フィルター、ヒーターなどの器具を正しくセットし、カルキ(塩素)を抜いた水を静かに注ぎます。器具の動作確認ができたら、まずはフィルターを24時間稼働させ続け、水を循環させましょう。
数日後、バクテリアの「エサ」となるアンモニアを発生させるために、丈夫な魚(パイロットフィッシュ)を少量入れるか、少量の熱帯魚用のエサを水槽に投入します。ここからバクテリアが自然に増えていくのを待ちます。この期間は、水替えを控えめにして環境を安定させることが重要です。
一般的に、水槽が安定して立ち上がったと言えるまでには2週間から1ヶ月程度の時間がかかります。最初の1週間でアンモニアが増え、次に毒性の強い亜硝酸が検出されるようになり、最終的にそれらが比較的無害な硝酸塩へと分解されるサイクルができあがります。
水がピカピカに透き通り、鼻を近づけても嫌な臭いがせず、パイロットフィッシュが元気にしていれば順調なサインです。焦って一度にたくさんの魚を追加せず、数匹ずつ様子を見ながら増やしていくのが、長期的な成功の秘訣です。
最も多い失敗は、水槽をセットしたその日にすべての魚を入れてしまうことです。バクテリアがいない水槽に大量の魚を入れると、水質悪化のスピードに分解が追いつかず、全滅のリスクが高まります。
また、立ち上げ途中に「水が汚れている気がする」と、フィルターの中にあるろ材を水道水でゴシゴシ洗ってしまうのも厳禁です。水道水の塩素によって、せっかく定着し始めたバクテリアが死滅してしまい、立ち上げが振り出しに戻ってしまいます。汚れが気になる場合は、飼育水ですすぐ程度にとどめましょう。
必須ではありませんが、使用することで立ち上げまでの時間を短縮できる場合があります。ただし、入れた瞬間にバクテリアが完璧に機能するわけではないため、規定量を守りつつ慎重に様子を見る姿勢は変わりません。
これはバクテリアが急激に増殖している時や、水質のバランスが変化している時によく見られる現象です。フィルターを止めずに回し続ければ、数日で自然に透明になることが多いので、焦って水を全部換えないようにしましょう。
水質の変化に強く、丈夫なアカヒレやプラティ、グッピーなどが選ばれることが多いです。ただし、後に飼いたいメインの魚との相性や、その魚を最後まで責任を持って飼えるかを考えて選ぶことが大切です。